【リード】
一般にスポーツ競技でのパフォーマンス向上のために行われるコンディショニング。しかし、この“整える”という試みが効果を発揮するのは、体だけではありません。メンタルやあるいは外見などを整えることによって、日々の生活のパフォーマンス向上にも役立ちます。
心(脳)と体と外見(美)を整える、そんな「ライフ・コンディショニング」について理解を深め、実践することによって、あなたも人生を最大化してみませんか。
- コンディショニングとは?
- コンディショニングは体のことだけじゃない。
- 心美体をコンディショニング
- 30代からはライフ・コンディショニングを意識してみよう。
- まとめ
【本文】
- コンディショニングとは?
皆さん、「コンディショニング」という言葉はご存知ですか。「もちろん、知っている!」という方も多いと思いますが、「あれっ、ヘア用のコンディショナーのこと?」あるいは「コンディションと何が違うの?」と思われた方がいるかもしれません。コンディショニングは英語のConditionの動詞「調子を整える」の名詞形、つまり「調子を整えること」という意味です。
現在、一般に「コンディショニング」というと「スポーツパフォーマンスを最大限に高めるために、筋力やパワー、柔軟性、持久力など競技パフォーマンスに関連する要素をトレーニングして、身体的な準備を整えること」といった意味で使われることが多いです。あるいは、より狭い領域で「主にスポーツ選手のコンディションの維持・疲労回復・運動機能向上を目的に行われるマッサージ」を指す場合もあります。
各地に専門のジムが開かれ、幾つかの民間機関がコンディショニングのコーチのための資格制度などを設けています。つまり体づくりに特化してなされる、ある種のトレーニングや施術を指すことが大半なのです。

- コンディショニングは体のことだけじゃない
一方、厚生労働省の e-ヘルスネットでは、コンディショニングとは、「運動競技において最高の能力を発揮出来るように精神面・肉体面・健康面などから状態を整えること」と定義 (e-ヘルスネット厚生労働省)。これについて言えば、整えるべき「精神面・肉体面・健康面」は、何もスポーツのパフォーマンスを上げるばかりではないのは当然です。
「コンディショニングの考え方は、アスリートだけではなく、国民一般の生活のパフォーマンス(ライフパフォーマンス)の向上にも活かされることが望まれる。コンディショニングには、運動・トレーニング、食事、精神、休養、睡眠等が含まれ、それらを総合的にコントロールすることが重要である」と、2023年に早稲田大学が実施したコンディショニングに関する研究プロジェクトの成果報告書でも指摘されています。
その中では「心身に多様な変化を与える運動・スポーツを実施し、それぞれのライフステージにおいて最高の能力が発揮できる状態(ライフパフォーマンスの向上)を目指すことによって、健康の保持増進はもとより、生活の質(Quality of Life:QOL)を高めるなど、生きがいのある充実した生活を送ることにも寄与できる」と、さらに一歩踏み込んだ緒言*1も行われていました。

- 心美体をコンディショニング
このように体やメンタル、外見を整えるよう気をつけていれば、毎日を生き生きと前向きな気持ちで過ごせることは間違いありません。ではそれぞれ具体的には、どんなことに気をつければいいのか、簡単に見てみましょう。
①心のコンディショニング
メンタルを整える点で、最も気をつけるべきはストレスです。うつ病やアルコール依存症などストレスによる自律神経の乱れが引き起こす直接的な症状でなくても、胃潰瘍や心筋梗塞など、多くの病気の原因にストレスが関わっていることは今や明らか。
しかしその一方で、実はストレスが全くなければ(そんなことは実際の生活にはあり得ないでしょうが)、人はここまで生き残れなかったともいわれています。適度なストレスは人間のレジリエンス(柔軟な回復力)を身につけていくために必要という側面があります。
したがって慢性的なストレスをコントロールし、適度な急性ストレスに対処することによって、私たちはより元気に生きられるようになるのです。

②美(外見)のコンディショニング
「髪型が決まらなくて憂鬱だ」「ネイビーのスーツと赤いネクタイのパワーコーディネイトのおかげで、今日のプレゼンに成功した」。このように外見が毎日の生活に影響を及ぼすシーンは、決して少なくありません。
自分自身の心理状態だけでなく、周囲の人の印象や気持ちをも左右します。決してラグジュアリーな装いをする必要はないですが、TPOにマッチし、清潔感のある身だしなみや自分の魅力を引き出すスタイリングを心得ることで、本人だけでなく、周りの環境にも好影響をもたらします。

③体のコンディショニング
健康は人生を豊かにするための最も基本的なベース。そして健康的な身体をてに入れるために気をつけるべき大切な要素が、食事と運動です。どちらも少な過ぎても、多過ぎても逆に健康を害する恐れがあり、量よりも質といった観点からバランスを整える必要があります。
この分野の研究は最近特に急速に進み、新しくさまざまな学説が発表され、さらに関連の器具や食品も次々と開発されています。ただ、まだ効果・効能が広く一般に、明確に証明されているものはそれほど多くはなく、現状で自分にとって効果を期待できるベストのコンディショニングの方法を見つけるには、ある程度の知識と経験が求められます。

4. 30代からはライフ・コンディショニングを意識してみよう。
「今まで電車のプラットフォームまで難なく駆け上がっていたのに、最近、キツく感じられる」「休日に着る服がいつもワンパターンになってきた」。日常でこういった些細な“ズレ”を感じるようになるのは、30代ぐらいが多いのではないでしょうか。
小さな違和感を見逃さず、自分自身と向き合うことこそ、コンディショニングの始まりです。向き合ってどこに原因がありそうなのかを考え、そのズレを調整する。毎日の食事を見直し、適切な運動を継続して気分転換を図り、装いに気を配る。そして日々の細々としたアクティビティの一つ一つの意味を改めて吟味し、いわば生活全体を一度、棚卸する。
これから社会の中心として活躍する時期を前に、ライフ・コンディショニングを意識するかどうかは、その後の人生を大きく左右することは間違いありません。
5. まとめ
改めていうまでもないですが、心と体も、そして見た目も一人の人間を形づくるもので、全てが繋がっており、切り離して考えることなどできません。今回は従来の、体を整えるコンディショニングをさらに発展させ、心や外見をも網羅した「ライフ・コンディショニング」ともいうべき基本的な考え方についてお伝えしました。
それは「心美体のコンディショニング」とも言い換えられ、それぞれ最も注意を払うべきポイントとして、①心(メンタル)では慢性的なストレスへの対処法、③体(身体)における食事と運動、さらに見落とされがちな②美(外見)として身だしなみ(美容)や服装(スタイリング)などが挙げられます。これらを適切な状態にコントロールすることによって、人生のトータルなパフォーマンスを上げることが可能です。
まずは今日から5分の瞑想と、15 分の散歩と腹7分目の食事を心がけ、普段と少し印象の異なる装いをして、街に出かけてみるなどしてはいかがですか。自分自身と周囲に起こる何か小さな変化を感じられるはずです。
心美体において継続的なコンディショニングを行い、毎日を最適化(オプティマイズ)することは、豊かな人生を送る上で欠かせないアプローチ。そんなライフ・コンディショニングの考え方を身につけることで、年齢を重ねても生き生きと活動を続ける「エイジレス・ピープル」として、一度きりの人生を思ったように生き切ることを目指したいですね。
心美体のコンディショニング→ライフ・オプティミゼーション→エイジレス・ピープル
出所:*1 令和5年度 Sport in Life推進プロジェクト「コンディショニングに関する研究(運動器機能低下に対する地域における効果的な運動療法のあり方に関する研究)」成果報告書 https://www.mext.go.jp/sports/content/20240514-spt_kensport01_000013744_2.pdf
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